必要なハードウェア
電源アダプターの選定
Raspberry Piの電源供給において、初心者が陥りやすい問題としてPCのUSBポートからの給電があります。USB 2.0は最大500mA、USB 3.0でも900mA程度の出力しか得られません。外付け機器を接続する際は電力不足の原因となるため、5V/2.5A以上の出力が可能な専用アダプターの使用を推奨します。
シリアル通信モジュール
初期設定段階ではSSH接続が確立していないため、シリアルコンソール経由でのアクセスが必要です。USB-TTL変換モジュール(CH340またはCP2102チップ搭載)を準備します。これらは主要なOSに対応しており、安価で入手可能です。
ストレージメディア
マイクロSDカードは8GB以上、Class 10以上の高速カードを選択します。動作確認済みブランド(SanDisk製など)を使用することで、起動不良や書き込みエラーの発生を大幅に削減できます。
ソフトウェアの準備
OSイメージの取得
公式サイトからRaspberry Pi OS(Desktop版推奨)をダウンロードします。デスクトップ環境が必要な場合は「Raspberry Pi OS with desktop」を選択します。
SDカードのフォーマット
SD Card Formatterを使用してマイクロSDカードを初期化します。これにより、ファイルシステムの不整合による書き込みエラーを防止できます。
イメージライター
Win32 Disk ImagerまたはRaspberry Pi Imagerを使用してOSイメージを書き込みます。後者は公式ツールで、OSの直接ダウンロード機能も備えています。
システムの書き込みと基本設定
OSイメージの書き込み手順
SDカードをフォーマットした後、イメージライターでOSイメージを書き込みます。書き込み完了後、bootパーティションの設定ファイルを編集します。
シリアルコンソールの有効化
config.txtに以下を追記してBluetoothのUART占有を無効化します:
dtoverlay=pi3-miniuart-bt
cmdline.txtの内容を以下に置き換えます:
dwc_otg.lpm_enable=0 console=tty1 console=serial0,115200 root=/dev/mmcblk0p2 rootfstype=ext4 elevator=deadline fsck.repair=yes rootwait
ユーザーアカウントの作成
2022年4月以降のリリースではデフォルトユーザーが廃止されたため、bootパーティションにuserconf.txtを作成し、以下の内容を記述します:
pi:$6$/4.VdYgDm7RJ0qM1$FwXCeQgDKkqrOU3RIRuDSKpauAbBvP11msq9X58c8Que2l1Dwq3vdJMgiZlQSbEXGaY5esVHGBNbCxKLVNqZW1
これにより、ユーザー名:pi、パスワード:raspberryでログイン可能になります。
シリアル接続による初回ログイン
配線方法
USB-TTLモジュールとRaspberry Piの接続は以下の通りです:
- TX(送信)→ RX(受信)
- RX(受信)→ TX(送信)
- GND → GND
送信線と受信線をクロス接続することが重要です。
ターミナルソフトの設定
MobaXtermやTera Termなどのターミナルソフトで、該当するCOMポートを選択し、ボーレート115200で接続します。Raspberry Piの起動ログが表示されたら、ユーザー名とパスワードを入力してログインします。
パスワードの変更
デフォルトパスワードを変更するには以下を実行します:
sudo passwd pi
ネットワーク設定
有線接続
イーサネットケーブルを接続するだけでDHCPにより自動的にIPアドレスが割り当てられます。ifconfigコマンドで確認可能です。
無線LAN設定
/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.confに以下を追記します:
country=CN
network={
ssid="WiFi名"
psk="パスワード"
}
接続トラブルシューティング
WiFi接続に失敗する場合、sudo raspi-configから「Localisation Options」→「WLAN Country」で日本(JP)を選択します。
SSH接続の確立
静的IPアドレスの設定
/etc/dhcpcd.confに以下を追記してIPアドレスを固定します:
interface wlan0
static ip_address=192.168.1.100/24
static routers=192.168.1.1
static domain_name_servers=192.168.1.1
SSHサービスの有効化
以下のいずれかの方法でSSHを有効化します:
- bootパーティションに「ssh」という名前の空ファイルを作成
sudo raspi-configの「Interface Options」からSSHを有効化sudo systemctl enable ssh && sudo systemctl start sshを実行
SSH接続の確認
ターミナルソフトでSSH接続を設定し、Raspberry PiのIPアドレス、ユーザー名、パスワードを入力して接続を確認します。
パッケージリポジトリの変更
ミラーサーバーの変更理由
デフォルトのリポジトリは海外サーバーであり、日本からは接続速度が遅くなる傾向があります。国内ミラーに変更することでaptコマンドの実行速度が大幅に向上します。
設定ファイルの編集
バックアップを作成後、/etc/apt/sources.listと/etc/apt/sources.list.d/raspi.listを編集します:
# バックアップ作成
sudo cp /etc/apt/sources.list /etc/apt/sources.list.bak
sudo cp /etc/apt/sources.list.d/raspi.list /etc/apt/sources.list.d/raspi.list.bak
# 東京理科大学ミラーに変更(例)
sudo sed -i "s|http://raspbian.raspberrypi.org/raspbian/|http://ftp.riken.jp/Linux/raspbian/raspbian/|g" /etc/apt/sources.list
システム更新
sudo apt update
sudo apt upgrade -y
ファイルシステムの拡張
初期状態ではSDカードの全容量が使用されていないため、パーティションを拡張します:
sudo raspi-configを実行- 「Advanced Options」を選択
- 「Expand Filesystem」を実行
- 再起動
再起動後、df -hで容量が拡張されたことを確認します。
エディタ環境の整備
nanoエディタの代わりにvimを使用する場合:
sudo apt install vim -y
/etc/vim/vimrcに設定を追記します:
syntax on
set number
set tabstop=4
set cursorline
set encoding=utf-8
タイムゾーン設定
以下のコマンドでタイムゾーンを日本に設定します:
sudo timedatectl set-timezone Asia/Tokyo
または、sudo dpkg-reconfigure tzdataでインタラクティブに設定します。
Bluetooth機能の復元
シリアル設定で変更したBluetooth関連の設定を元に戻します。/boot/config.txtのdtoverlay=pi3-miniuart-btを削除またはコメントアウトし、enable_uart=1に設定します。
システムバックアップ
設定完了後、Win32 Disk Imagerを使用してSDカードのイメージを作成します:
- SDカードをPCに接続
- Win32 Disk Imagerを起動
- 「Read」ボタンでイメージファイルを作成
作成されたイメージファイルは、復旧時のバックアップとして活用できます。